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おじさん4兄弟に1500人が殺到! 中京テレビがマーケットスクエアささしまで仕掛ける、 新しい店舗運営のありかた。

マーケットスクエアささしまで異彩を放つテナントがある。すぐ近くに本社ビルを構える中京テレビのXR AMUSEMENTだ。よくある番組グッズのアンテナショップではなく、今までにない試みに挑戦し、2020年10月には1500人を集めた。マーケットスクエアささしまに旋風を巻き起こしている中京テレビの仕掛けと、そもそも店舗オープンに至った経緯を、ビジネス開発部部長の中嶋さんと副部長の市さんに聞いた

そもそも出店いただいたきっかけは、飲み会でしたね。

らしいね(笑)。

ささしまエリアの懇親会で、たまたま横に座っていた中京テレビの総務部長に「マーケットスクエアささしまをリニューアルするので、出店しませんか?」って声をかけてみたんです。席順が違っていたら声をかけてなかったかもしれません(笑)。

そしたら僕がこんなに苦労することはなかったんじゃないの?(笑)、というのは冗談ですけど、運命的ですね。

せっかくエンタメやアミューズメントが中心になった施設ですし、いつもとひと味違ったテナントさんに入ってもらいたいと思っていました。そこで思いついたのが、メディアに場所を持ってもらうことです。コンテンツという資産をたくさん持っている中京テレビさんが入ってくださったら、この施設はもっと面白くなるぞと直感で感じました。

とはいえ、お声がけしたときは、実際ノープラン。中京テレビのアンテナショップをイメージしていました。

僕のいるビジネス開発部に、総務部長が出店の話を持ってきてくれたのは2019年8月。テレビ局は、いずれ広告頼みの売上構造オンリーでは立ち行かなくなりそうですし、チャレンジしてみたいなと思ったんですよね。視聴者である地元の方と対話ができる場が持てることにも興味がありました。でもアンテナショップではないなと思ってた。

12月に出店が決定するまで、そこから4ヶ月は何をやろうかをずっと考えていました。そこで当初目を付けたのがVRです。

紆余曲折あったのですが、オープン時にはキャラクターのコラボカフェとVRの施設にしようと決まりました。当初の想定より、スペースを広く借りたいとお願いしたんですよね。

その提案をいただいたとき、「中京テレビが本気になってくれた」と思いましたね。嬉しいし、こちらもその想いに応えないといけない。身が一段と引き締まりました。

スペース面積を調整してくれたり、中身のアイデアもいろいろしてくれたよね。社内の人間だけで考えるとどうしても煮詰まってしまうから、全国の商業施設の知見がある眞明さんとブレストできたのはありがたかった。

僕も中嶋さんだからできたというのは大きいですよ。お互い、このささしまエリアに居を構えた身ですし、互いに退路はない。深入りした方が一緒にいいものを作れると思ったんです。

そして無事オープンにこぎつけたわけですが、正直コロナウイルスの影響もあって、なかなか辛い門出となってしまいましたね。

そうですね、人の動きがなくなってしまって。正直来客が0人の日もありましたね。

体験してくださった方の満足度は高い。ARは価値あるコンテンツだと確信が持てたものの、そもそも人が来ないんです。8月、9月は低空飛行で計画の1/10程度に終わってしまいました。

このままではと、テコ入れをすることになり、今奮闘してくれているのが、当社の看板番組のプロデューサーだった市です。

私はテレビ業界に入り23年、主にバラエティの番組制作をやってきて、店舗運営なんてもちろん門外漢でした。

番組制作のプロデューサーという仕事は、与えられた予算でいかに面白い番組を作るか。つまり「お金を使う」仕事なんです。対して店舗運営は、「お金を稼ぐ」仕事。今までと180度違う業務に四苦八苦しています(笑)。でも最高に面白いですね。

これまでのARを使ったアトラクション運営から、店舗の内容がガラッと変わったとのことですが、どんなことを仕掛けているんでしょうか?

キーワードは「ヲタ活」です。

とにかく、待っていても人が来ないんですよ。コロナの影響は大きいですし、ここはふらりと立ち寄る立地でもない。だから我々が、ここを目的地にしてもらうモチベーションを設計する必要があるんです。そこで目をつけたのが、コアなファンの熱量です。

濃いコンテンツの力があれば、熱狂的なファンは必ず足を運んでくれる。そう考えました。

面白い!何をやったんですか?

大幅リニューアルとなる初回のコンテンツは、とにかく当てないといけない。プレッシャーもあったので、これまで培った自分の仕事貯金を存分に使ってやろうと思いました。

そこで、私がプロデューサーをしていた番組、『PS純金』で人気に火が着いた、「びっくりや」の4兄弟をのポップアップストアを企画したんです。

びっくりや??すみません、初めて耳にしました。

『PS純金』は高田純次さん、オリエンタルラジオ藤森慎吾さんが「やっぱり地元はオモシロい」をテーマに東海エリアを紹介する番組です。毎週金曜よる7時から放送しているんですが、そこで取り上げた焼肉屋の「びっくりや」がヒットコンテンツとなり、東海エリアではずいぶんと有名になったんです。

4兄弟で経営しているんですけど、4人それぞれ超個性派で面白い。放送を重ねるたびに人気が出て、今やファミリーや若い女性が押し寄せる観光スポットとなっていた。

そこで、人気店となり忙しい日々を送っている4兄弟をなんとか説得して、期間限定でびっくりやのポップアップストアを開くことにしました。

番組、番組のSNS、ウェブサイトなど、中京テレビのリソース総出で宣伝をしましたね。

結果として、10日間で1500人!!キーホルダーが2日には完売してしまいました。おじさんのグッズなんて売れると思わないじゃないですか(笑)。

それでも勇気を出してかなり強気に在庫を作ったのに、すぐに完売。大慌てで在庫を追加し、社内でみんなで袋詰作業をしました。さながら文化祭状態でしたね。

ちょっと僕、今鳥肌立ってます。これまで培ったご経験がすべてうまく活きているのが衝撃ですし、初回から成功させるのもすごい。来られた1500人のお客さまは、どんな様子でしたか?

とにかく、4兄弟に会いたいというモチベーションなんですよ。メインの焼肉弁当ももちろん売れたし、4兄弟のグッズや、兄弟と一緒に写真が撮れるARも人気でした。でもとにかく、4兄弟と話したい、写真を撮りたいって店舗に足を運んでくれたんです。4兄弟のみなさんも驚きの熱気が、会場に渦巻いていましたね。

まるでアイドルですね。全国区の有名人ではない、しかもおじさんに、ファンが殺到するのも衝撃です。

生身のお客さんの熱気を直に感じるのは、高視聴率が取れるのとはまた違った喜びがありましたね。

びっくりやを常設してもいいくらいでは。

それもいいのですが、今後はこの店舗でいろいろと実験を行おうと思っているんです。

第二弾は、地元名古屋のアイドルグループTEAM SHACHIのポップアップショップを開設。集客は本人たちのSNSの告知や拡散のみで実施しました。

そして第三弾では、TikTok (ティックトック) 撮影用のスタジオとして運営。これは来場者が撮ったTikTok動画自体が集客手段にもなります。

それぞれターゲット層も集客手法も異なるコンテンツを比較しようと思っているんです。

そもそもこの店舗はどん底からのスタートでした。だから何をやっても全てがプラス。我々のようなメディアがハコを持つと何ができるのかを試している最中です。

なるほど。「箱モノ」という単語がありますが、最近では、いくら立派なハコを作っても、そこにストーリーがないと人が集まらなくなっていると感じます。それを体現した素晴らしい事例ですね。リソースを使って実験をするというのも、新規事業部のあるべき一歩の踏み出し方ですよね。

僕たち東急不動産も、東京の銀座にある東急プラザで、経済メディアであるNewsPicksさんと新しい取り組みをしています。メディアをテナントとしてお迎えすることは我々にとっても新しい挑戦。ストーリーで人を商業施設に呼ぶという、未来の当たり前を作りに行きたいと思っています。

(取材・文/井澤 梓)

1F・エンターテイメント XRA

PROFILE

中嶋 裕之 Hiroyuki Nakajima

1967年生まれ、東京都出身。
中京テレビで3年前に新設された新規ビジネス開発部署のマネージャーとして、エンターテインメント、企業活動、生活、教育ほか様々な領域で、放送局としての資産や強みをベースに、今まで世の中に無かった新しい価値の創出に取り組んでいる。

PROFILE

市 健治 Kenji Ichi

1974年生まれ、岡山県出身。
入社以来、番組制作に携わり2年前から新規ビジネス開発部と兼務。

PROFILE

眞明 大介 Daisuke Shimmei

1982年生まれ、神戸市出身。東急不動産で商業施設のアセットマネジメントや渋谷駅桜丘口地区再開発、神宮前六丁目地区再開発の商業施設運営企画に携わり、グループ事業の東急ハンズでも事業開発に取り組んでいる。
商業施設賃貸業や小売業の新たな事業の形を模索している。